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【相続した田畑どうする?】放棄・売却・活用の選び方と成功事例を解説!

【相続した田畑どうする?】放棄・売却・活用の選び方と成功事例を解説!

はじめに

「田畑を相続したけど、どうすればいいのかわからない」「売りたくても売れない」「維持費がかかってしまう」とお悩みではありませんか?実は田畑にも、放棄や売却だけでなく「土地活用」という選択肢があります。うまく活用すれば、相続した田畑を負担ではなく、収益を生む資産に変えることも可能です。

この記事では田畑を相続したとき、知っておくべき選択肢や手続き、そして立地や広さ別の具体的な土地活用事例まで詳しく解説しています。
この記事を読めば相続した田畑にどんな可能性があるのか、どのような選択肢がご自分に合っているのかが分かるようになります。
田畑の相続でお悩みの方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

1 )田畑を相続したら確認したいこと

田畑を相続したら確認したいこと

田畑を相続したとき、多くの方が「どうすればいいのか分からない」と戸惑います。農地には宅地とは異なる法律や制限があるため、安易に売ったり放置したりすると後からトラブルになることもあるからです。
ここでは、相続した田畑に対して最初に確認すべきポイントを5つに分けて解説します。

1-1 )まず田畑の法的な定義を知っておきましょう

「田畑」とは、農業を目的とした土地のうち、「田」=水田、「畑」=畑作地として利用されている土地を指します。どちらも法的には「農地」として扱われ、農地法による制限を受けることが特徴です。
農地を売る・貸す・活用するには、通常の宅地とは違うルールや手続きが必要になります。

相続した土地が農地であるかどうかを正確に知るには、「登記簿の地目」や「固定資産税の課税明細書」を確認する方法があります。地目が「田」や「畑」と記載されている場合は、農地法の対象になります。

1-2 )相続人が農業をおこなうか

相続した田畑に対して、まず大前提として「自分または家族が農業を継続する意思があるか」ということを確認してください。農地を相続する場合、手続きをすればそのまま使い続けることができます。
ここで気を付けておきたいのが「なんとなく相続したけどやっぱり農業はやらない」となった場合です。農業を行わない場合、遊休地として扱われるため1.8倍の固定資産税を支払うことになります。

農地の固定資産税優遇制度
  • 売買価格 × 0.55(限界収益率)

農業を行わない場合、この優遇制度が該当しなくなるため、結果的に農地と比較して1.8倍の固定資産税を払うことになります。

このように後になって困ってしまうケースや、相続したタイミングでしか行えない対応もあります。まずは相続が確定する前に相続人が農業を行うかどうかを確認しておくことが大切です。

1-3 )広さや場所の立地確認

広さや立地はとても大切な判断材料です。農業を続けていけるのか、または他のことに使えるのかを具体的に考えるために必要な情報になります。
例えば、あまり広くない土地であれば農業を続けているかもしれない。また、とても立地が良く他の用途に利用しやすければ、売買や土地活用などの選択肢も見えてきます。

相続した土地がどこにあるのか分からない、境界があいまいというケースも珍しくありません。特に田畑や山林は登記上の住所と実際の場所が異なっていたり、現地で境界標が不明になっていたりすることもあります。
まずは固定資産税の明細書や法務局の登記情報をもとに、正確な場所と広さを確認しましょう。

1-4 )費用と管理の手間

田畑を相続する前に、費用や手間についてよく確認しておきましょう。土地は売却しないとお金になりませんが、相続税や固定資産税はお金で支払う必要があります。つまり、持っているだけではお金だけが出ていくという状況になります。

田畑を相続する際に確認しておくべき費用
  • 相続税
  • 固定資産税
  • 維持管理費用

維持していく手間についてもよく確認しておく必要があります。農業を行わず、遊休地として放置しておく場合も、近隣に迷惑が掛からないように最低限草刈りを年に数回行う必要があります。
 

① 相続税(課税対象となった場合)

相続した田畑の評価額によっては相続税がかかる可能性があります。農地には特例もありますが、申告手続きや期限の確認が必要です。放置すると延滞税などのペナルティが発生することもあるため、早めに確認しておきましょう。

② 固定資産税(毎年支払い)

農地であっても固定資産税は課税されます。広大な土地を所有していると負担が大きくなることがあります。農業をしていない場合は農地として認定されないため固定資産税の減免が受けられなくなります。

③ 草刈り・水路の管理などの維持作業と費用

農地は放置しておくと雑草が生い茂り、害虫の発生や近隣からの苦情につながります。水田には水路管理などの地域活動が伴う場合もあり、年に数回の草刈りや設備の管理作業が必要なこともあります。その際、業者委託や必要物品の購入等による費用が発生することもあります。

④ 境界確認や農地法関連の手続き

農地を売却・貸与・転用する場合には、境界確認や農地法に基づく申請手続きが必要です。法務局や農業委員会とのやり取りが発生します。専門的では分かりづらい点が多いため、専門家への相談、手順や期日の確認などをしておく必要があります。

1-5 )手放すか維持するかの判断

ここまでの確認を踏まえて「この土地を手放すか維持するか」を判断する必要があります。その際、自分ひとりで決めるのではなく、家族や親族と相談しながら進めることが大切です。
手放すと決めても、別の親族から「売るくらいならうちが農業をやりたかった」と言われてしまうかもしれません。逆に気が変わることもあるかもしれないと残して置いたら「結局税金と維持費だけ相続人が負担している」など、親族内でも揉め事の種になってしまうこともあります。
一度手放してしまったら戻すことは簡単ではありません。維持していこうと決めても、いざ大変な思いをすることになったときにはどうにもならないということもあります。

田畑を存続させるかどうかということは、相続人の将来に関わる大きな問題です。
まずは「今自分がどうしたいか」「どのくらいの負担がかかるか」を整理し、土地の可能性とリスクを把握した上で、方向性を明確にしておくことが大切です。

2 )相続した田畑を手放す方法

相続した田畑を手放す方法

相続した田畑を「使う予定がない」「管理できそうにない」と感じたとき、多くの方が「手放したい」と考えるのではないでしょうか。
ここでは、相続した農地を手放すための主な3つの方法を紹介します。どの方法にも一定の条件や制約があります。それぞれの特徴を理解したうえで検討することが大切です。

2-1 )相続を放棄する

田畑に限らず、不動産は相続しても「売れない、貸せない、建て直せない」など問題を抱えている場合も少なくありません。こうした遺産はお金に換えることができないのに相続税や固定資産税などの支払いだけが残ります。つまりは相続しても出費しかないという負の遺産も存在します。

相続をしたくない遺産を処理したい場合、多くの人が「遺産を放棄したい」と考えます。遺産を放棄する場合は次の3つの注意点があります。
 

①すべての相続を放棄することになる

相続放棄をすると、田畑だけでなく他の預貯金やプラスの財産も一切相続できなくなります。特定の遺産だけを放棄することはできないため、他に価値のある財産がある場合は慎重な判断が必要です。

➁放棄したら取り消せない

相続放棄は一度申述が受理されると原則として撤回ができません。「やっぱり相続しておけばよかった」と後悔しても手遅れになるため、情報を集めたうえで決断することが大切です。

③不動産の場合管理責任が残る場合もある

相続放棄をしても次の相続人が決まるまでの間は「不動産の管理責任が残る」とされることがあります。草刈りや境界問題、災害時の安全確保などについて、一時的に管理義務を問われることがある点には注意が必要です。

④相続放棄には期限がある

相続放棄は相続が発生してから原則3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があるため、判断は早めに行うことが求められます。期限を過ぎると自動的に相続を承認したものとみなされることがあるため、早期の情報収集と家族での話し合いが大切です。

2-2 )売却する

使う予定のない農地は、売却して手放すという選択もあります。しかし、農地は国の食料自給を支える重要な土地として、他の用途地とは異なる基準があります。他の用途地と比べて簡単に売り買いや変更ができません。
農地として売るのか、用途変更(農地転用)して売るのかによって方法が変わります。
 

①農地として売却する場合

農地をそのままの用途で売却するには、農地法第3条に基づく許可が必要です。
この許可を得るためには、買い手が農業従事者または農業法人であることが原則条件となります。
適正に運用できるかなど様々な審査があり、簡単に許可が下りないケースもあります。農業を行う人が少ない現状では、農地を購入できる人が限られています。希望通りの価格で売却するのが難しかったり、買い手がなかなか見つからなかったりします。売りたくてもすぐに売却出来るとは限らないことを考慮しておきましょう。

➁用途変更(農地転用)して売却する場合

相続した土地を農地ではなく、別の用途地として登録し直す方法が農地転用です。
これは農地法第5条に基づき、自治体や農業委員会の「農地転用許可」を得る必要があります。
転用が認められるかどうかは、その土地が属している地域の区分(市街化区域・市街化調整区域など)や、都市計画の内容によって大きく左右されます。
うまく転用できれば農地よりも高く売却できる可能性があるため、場所や周辺環境によっては十分に検討する価値があります。

2-3 )相続土地国庫帰属制度を利用する

2023年に始まった「相続土地国庫帰属制度」は、相続した土地を国に引き取ってもらう制度です。使い道がなく売却も難しいような土地を一定の条件のもと、無償または10年分の管理費相当を支払って国へ返却できるという内容です。

ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではなく、以下のような条件を満たす必要があります。

相続土地国庫帰属制度の基本的な条件
  • 建物が建っていない土地
  • 担保権や使用権が設定されていない
  • 隣地との境界が明確で、争いがない
  • 土壌汚染や埋設物などがない

 

また、審査には時間がかかる場合があり、申請が通らなければ返却できない可能性もあります。
「どうしても引き取り手が見つからない」「税金と維持の負担だけが重くのしかかる」といったケースでは有効な選択肢となるでしょう。

3 )農業をせず相続した土地を維持する方法

田畑を相続しても自分では農業をする予定がない場合、それでも土地を放棄せずに維持していく方法はいくつかあります。ここでは、農業をしない選択をした場合に取りうる3つの方向性をご紹介します。

3-1 )他の農家に貸す

自分で使用しない田畑は農地として他の農家に貸し出す方法があります。これは「農地法第3条」に基づき、農業を営む人に対して貸すことで農地としての機能を維持できます。

農地として貸し出すことで次のようなメリットがあります。

メリット
  • 収入が得られる
  • 草刈りなど維持管理の手間が減る
  • 農地としての機能を維持できる

 
農地は放置しておくと草が生えるだけではありません。雑草が繰り返し生えることで土の性質が変わり、食料を生産する農地としての機能を失っていきます。元の状態に戻すには時間と費用が掛かることもあります。相続した田畑を農地として継続利用してくれる人がいれば田畑の機能を保つことにもなります。

農地として貸し出すことはメリットばかりではありません。次のような点には注意が必要です。

デメリット
  • 自由に土地を使いにくくなる
  • 一度契約すると途中解約が難しい
  • 農業者以外には貸せないため借り手が限られる
  • 貸している間は転用や売却が制限されることがある

 
農地法により、農地の貸借は厳しく管理されており、契約には農業委員会の許可が必要です。契約期間が長期になりやすく、将来的に転用や売却を検討した際に、スムーズに移行できないこともあります。将来的な方針が未定の場合は慎重に判断することが大切です。

3-2 )最低限の農業を行って農地を維持する

農地法で農地とは「耕作の目的に供される土地」とされています。そこで行われる農業に関しては販売目的等の定義はありません。つまり、土地を耕作し作物を作っている状況を維持できていれば、農地として認められます。
作物をつくっていない場合や土地が荒廃していると評価された場合は「遊休地」や「耕作放棄地」と認定されてしまうことがあるので注意しましょう。

田畑を相続した場合、最低限の農業で農地を維持することで得られるメリットは次のようなことがあります。

メリット
  • 農地を維持し、後から農業を再開できる
  • 固定資産税の優遇措置を受け続けられる
  • 相続後すぐに売却や転用の決断をしなくて済む

 
相続時に農業を行えなくても、農地としての機能を維持しておくことで将来的に農業を行う可能性がある場合は決断を先に延ばすことができます。

最低限の農業で田畑を農地として維持していくには注意点やデメリットについてもよく考えておく必要があります。

デメリット
  • 農地としての状態を維持する手間と費用が掛かる
  • 農地としての基準は自治体によって異なる
  • 農地としての基準は自治体によって異なる

 
注意しておくべきポイントは、最低限と言っても農地として認められる機能を維持していくだけの労力がかけられるかどうかをしっかりと見極めることです。
農地として認められない場合は固定資産税の優遇などが取り消されてしまいます。

3-3 )農地転用し別用途で土地活用する

農業をしない・貸す相手もいないという場合は、農地転用を検討することで宅地や駐車場、資材置き場などへの転用が可能です。
農地転用には農業委員会などの許可が必要となりますが、活用の選択肢が広がるため収益化や維持管理の面で現実的な方法となるケースもあります。
ただし、土地のある場所によっては転用が認められない地域(市街化調整区域など)もあるため、まずは自治体に確認することが大切です。

4 )田畑を土地活用する前に確認しておくこと

田畑を農業以外で活用するには、事前の情報確認がとても大切です。どんな場所にあるのか、どんな規模か、どれくらい手間をかけられるかといった点を把握しておくことで、現実的な活用プランを立てることができます。

4-1 )田畑の種類

田畑には「田」と「畑」の区別があり、それぞれに適した活用方法があります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
 

①田の特徴

「田」は水を引いて稲作に使う土地のため、水はけが悪い特徴があります。
このため、土地活用する場合には排水設備の整備が必要になることが多く、転用コストが高くなる傾向があります。
また、地盤が柔らかいこともあり、重い建物の建設には地盤改良工事が必要になる場合もあります。

➁畑の特徴

「畑」は野菜や果樹などを育てるために利用される、比較的乾いた土地です。
水を引くための大規模な設備が不要なため、転用しやすい場合が多く、
駐車場や資材置き場など簡易な用途への転用が比較的スムーズに進みやすいです。
ただし、土地によっては土壌改良や整地作業が必要になることもあります。

4-2 )広さや場の立地

同じ農地でも広さや立地によって向いている活用方法は大きく異なります。特に以下のようなポイントは、活用の選択肢を絞るうえでとても大切ですので確認しておきましょう。
 

① 市街地との距離

市街地に近い土地は、住宅用地や商業用地への転用がしやすい傾向があります。交通アクセスの良さもポイントです。

➁ 市街化調整区域かどうか

この区域では原則として農地の転用や建築が制限されており、活用方法が大きく制限されます。用途地域の確認が必要です。

③ ロードサイド

交通量の多い幹線道路沿いの土地は店舗や駐車場、資材置き場として活用されやすいため、いろいろな事業を行いやすい特徴があります

④ 観光資源はあるか

観光資源が近くにある場合は観光客の対応を目的とした事業が考えられます。また、グランピング施設や農業体験などの観光資源と連携した活用を考えることもできます。

4-3 )どのくらいの手間をかけられるか

相続した田畑を土地活用する場合、どれくらいの手間や労力をかけれられるのかによって、選択する事業の方向性は大きく異なってきます。現実的にどの程度の手間と労力を想定しているのかを確認することはとても大切です。

① 休日を利用したスモールビジネスとして

空いた時間を使って、草刈りや簡易な整備、管理だけを行うスタイル。貸し駐車場などの省力型活用が向いています。

➁ サイドビジネスとして

収益を目的にしつつ、ある程度の時間を使って運営に関わる。太陽光発電や貸倉庫、貸農園などが現実的です。

③ メインビジネスでも対応できる

本業として取り組む覚悟があれば、建物を建てて店舗や賃貸経営、農業体験施設なども視野に入ります。
その分初期費用や管理の負担も大きくなるため、しっかりした事業計画が大切です。

5 )田畑を転用した土地活用例

田畑を転用した土地活用例

農業を続けない場合でも、田畑を手放さずに活用する方法はいくつもあります。特に農地転用を行えば、さまざまな用途に土地を転用することができ、収益や資産活用につながります。ここでは代表的な活用事例をご紹介します。

5-1 )太陽光発電

初期投資が必要だが、長期的な安定収益が見込める活用法
田畑の広さや日当たりの良さを活かして、太陽光パネルを設置し売電収入を得る方法です。近年では、農地を一時的に転用して太陽光発電を行う「一時転用」制度も利用されることがあります。

メリット
  • 比較的手間がかからない
  • 長期にわたる安定収入が見込める

 

注意点
  • 設備投資に数百万円以上かかることも
  • 周囲の反射や景観への配慮が必要
  • 固定価格買取制度の内容に左右される

適した立地
  • 日照時間の長いエリア
  • 平坦で広い農地
  • 市街地から少し離れた場所でもOK

 

5-2 )資材置き場、貸倉庫

建物を建てずに収益化しやすい活用法
農地転用をして更地のまま資材置き場や貸倉庫として活用する方法です。建物を建てないため、比較的低コストで始められ、事業者などからのニーズも高い活用法です。

メリット
  • 建物を建てないため初期費用が抑えられる
  • 工事会社や物流会社からの需要がある

 

注意点
  • 農地転用の許可が必要
  • 資材置き場のままだと資産価値は上がりにくい
  • 雑草対策など最低限の維持管理が必要

適した立地
  • ロードサイドや工業地域周辺
  • トラックなどが出入りしやすいアクセスの良い場所

 

5-3 )駐車場

コンパクトな土地でも運用可能な定番の土地活用
住宅街や駅近エリアにある農地は、コインパーキングや月極駐車場として転用されるケースも多くあります。舗装や設備を最小限にすれば、小規模な農地でも始めやすい活用法です。

メリット
  • 比較的低コストで始められる
  • 管理がしやすい
  • 利用者が入れ替わっても空室リスクが少ない

 

注意点
  • エリアによっては利用者が見つからない場合も
  • 未舗装の場合、雨天時のぬかるみや雑草管理が必要

適した立地
  • 駅近・住宅街・商業施設周辺
  • 車の通行量が多いエリア

 

5-4 )賃貸住宅、店舗

本格的な土地活用として人気のある選択肢
農地を宅地に転用し、アパートや戸建て賃貸、店舗を建てて賃貸経営を行う方法です。初期投資は大きいですが、長期的な家賃収入が見込め、資産としての価値も維持しやすくなります。

メリット
  • 安定した家賃収入が得られる
  • 土地の資産価値が高まりやすい

 

注意点
  • 初期投資が大きく、融資計画が必要
  • 建物の維持管理や入居者対応が必要
  • 市街化調整区域では建築許可が下りない可能性も

適した立地
  • 市街化区域や住宅地
  • 商業施設、公共施設の近隣

 

5-5 )店舗経営

自分で事業を行う場合の活用法として有効
農地を転用して、自ら飲食店や直売所などの店舗を運営するという選択もあります。特産品や農産物の販売など、地域性を活かした経営スタイルを取ることも可能です。

メリット
  • 自分のアイデアで土地を活かせる
  • 地域とのつながりが生まれやすい

 

注意点
  • 経営ノウハウが必要
  • 収益が安定するまで時間がかかることも

適した立地
  • 観光地や道の駅付近
  • 幹線道路沿い(ロードサイド)

 

6 )田畑相続で知っておくべき法律と手続き

田畑を相続した際は、「農地だからこそ必要な知識」や「土地の種類によって異なる法律上の制約」に気をつける必要があります。知らずに進めてしまうと、思わぬ制限や手続きの負担に悩まされることもあります。
この章では、土地活用の前に知っておくべき代表的な法律や手続きを3つの視点で解説します。

6-1 )農地法と農地転用の基本知識

農地を売る・貸す・用途を変えるときは「農地法」に基づいた手続きが必要です。
農地法は、農地の保護と農業の安定的な継続を目的とした法律です。田や畑といった農地を売ったり、貸したり、転用したりする際には、農業委員会や都道府県知事の許可が必要となります。

  • 農地を農地として売買・貸借する場合 → 農地法第3条の許可が必要
  • 農地を住宅地や駐車場などに用途変更する場合 → 農地法第5条の許可が必要(所有権移転+転用)

 

許可を受けずに勝手に転用した場合、行政指導や原状回復命令を受けることもあります。スムーズに進めるためにも、最初に「何のために」「どのように使うか」を明確にしたうえで、事前に農業委員会に相談しておきましょう。

6-2 )市街化調整区域・用途地域の違い

土地が「どの区域にあるか」で、建物が建てられるかどうかが決まります。
農地の中には、市街化調整区域に指定されているものもあります。これは都市計画法によって市街化を抑制する区域であり、原則として住宅や店舗などの建築が制限されています。

  • 市街化調整区域:転用や建築が厳しく制限されている
  • 市街化区域:住宅や商業施設などの建築が比較的自由

 
また、用途地域によっても建てられる建物の種類や規模が変わります。例えば「第一種低層住居専用地域」ではアパートや大きな店舗を建てることができません。
土地を活用するには、まず「その土地で何ができるか」を用途地域と都市計画で確認することが大切です。自治体の都市計画課などに問い合わせると、詳細な情報が得られます。

6-3 )農地を貸す場合の注意点

農地を貸すときは、相手や期間によって契約内容が変わります。
農地を第三者に貸す場合も、農地法第3条の許可が必要です。貸し出す相手が農業従事者であること、耕作に必要な面積が確保されていることなど、いくつかの条件を満たさなければなりません。

  • 許可を得て貸し出す →「農地の一時転用」ではない
  • 契約の期間が長期にわたる場合 → 将来的に土地の自由な利用に影響する可能性あり

 
賃貸借契約が終了しても借主が返還に応じないケースもあるため、契約内容は慎重に決めましょう。契約書を作成する際は、農業委員会や専門家に相談するのがおすすめです。

7 )相談するなら誰に?活用の第一歩を支援する専門家たち

相談するなら誰に?活用の第一歩を支援する専門家たち

田畑を相続したとき、「どこに相談すればよいのか分からない」という悩みを抱える方は多いものです。田畑の相続・維持・活用には、法律や制度、地域の事情など専門的な知識が求められるため、信頼できる専門家への相談が欠かせません。
この章では、相談先ごとの特徴や活用の仕方についてご紹介します。

7-1 )市役所・農業委員会に相談する場合

農地の管理や転用、貸し出しに関する最初の相談先は、地元の農業委員会です。
農業委員会は、農地法の手続きや転用申請、農地の現況調査などを行っている機関であり、農地に関する制度や地域のルールに詳しい専門窓口です。転用や貸出を検討している場合は、まず農業委員会でその土地がどのような扱いかを確認することが大切です。

  • 農地として貸せるか、転用できるかを確認
  • 手続きに必要な書類やスケジュールの確認
  • 市街化区域・調整区域などの分類の確認

 
地域によっては窓口が農業振興課や農政課と分かれていることもあるため、市役所で確認してみましょう。

7-2 )建設会社や不動産会社の活用提案

土地活用の具体的なプランを検討する際は、建設会社や不動産会社の提案が参考になります。
農地を宅地や事業用として活用したいと考えている場合、建設会社や不動産会社が持つ「土地活用のノウハウ」は大きな力になります。

  • 太陽光発電や駐車場、アパート建設などの収支シミュレーション
  • 土地の形状や立地に応じた提案
  • 工事や運営管理の相談も可能

 
特に地元での実績がある会社は、自治体との連携や地域性を踏まえた提案をしてくれることが多いため、初期相談の段階から話を聞いてみるのも有効です。

7-3 )税理士・司法書士への相談が必要なとき

相続手続きや税金対策を進める際には、税理士や司法書士の専門知識が役立ちます。
相続税の申告や農地の名義変更、相続放棄や売買契約に関わる手続きは、専門的な法律知識が求められるため、プロのサポートが安心です。

  • 税理士:相続税の試算や節税対策、納税資金の準備など
  • 司法書士:名義変更や登記の手続き、遺産分割協議のサポート

 
農地の扱いによっては特例制度が使えることもあるため、個別の事情に応じたアドバイスが受けられる専門家との連携が大切です。

8 )まとめ

田畑を相続したとき、対応を後回しにすると費用や手間の負担が年々大きくなります。大切なのは、土地の状況と自分の方針を早めに整理し、「維持」「手放す」「活用する」の中から最適な方向を選ぶことです。

どの選択にもメリットと注意点がありますが、放置はリスクしか生みません。わからない点や不安がある場合は、信頼できる専門家に相談することで道が開けます。
使われていない田畑にも可能性があります。まずは一歩踏み出してあなたの土地の価値について考えてみましょう。